廃棄物処理法あるあるスタディ

コラム廃棄物処理法あるあるスタディ

廃棄物処理法のポイントをご紹介します。

執筆:メジャーヴィーナス・ジャパン株式会社 シニアコンサルタント 堀口 昌澄

第4回

「 それ、まだ捨てちゃダメ 」

メジャーヴィーナス・ジャパン株式会社
シニアコンサルタント 堀口 昌澄

部屋に落ちているものをゴミだと思って捨てたら、あとで怒られたということはないでしょうか。捨てたほうにしてみれば、「ちゃんとしまわずに放置していたのが悪い」という言い分ですが、持ち主に言わせると「捨てる前に確認してくれ」ということでしょう。実際、本人にとっては形見や思い出の品でも、他人にとってはただのガラクタに過ぎないこともあります。土産物を包んでいるお洒落な包装紙を、破らず丁寧に開けて大事に取っておく人があれば、躊躇なく捨てる人もいます。このように、ゴミかどうかの判断は当事者の意思・主観によるところが大きいのですが、断捨離が難しいように、本人ですら判断に迷うことがあります。断捨離が病的なまでに全くできない極端な例がゴミ屋敷です。そこに住んでいる当事者がゴミだと考えていないこともあり、廃棄物処理法は使いにくいのでしょう、各自治体は条例で「堆積している物品が問題を生じている」として撤去などができるようにしています。“物品”と呼ぶことで“廃棄物かどうか”という難しい判断をしなくて済むようにしています。
しかし、このような本人の意思、主観のみによって廃棄物かどうかを判断したのでは、法律の規制を適用するのが難しくなります。そこで通常、廃棄物処理法では「売れるかどうか」を客観的な判断基準として採用しています。確かに売れるものをゴミとは言わないでしょうし、不法投棄して周りに迷惑を及ぼすこともないはずです。売れないものだからこそ、不法投棄するのだと考えれば、規制対象として適切だと言えそうです。
ところが、これも判断基準として安定しているとは言い切れません。鉄鉱石や原油の価格が上昇すればリサイクル原料へのニーズが高まり、売れなかったものが売れるようになるかもしれません。または、技術革新により捨てていたものがリサイクルできるようになることもありますし、捨てようとしたものが、骨董品として高く売れたなんてこともあります。売れたからといって良い話ばかりではありません。例えば、価値の高い金属にプラスチックやガラスが複合している機械を売却できたとしましょう。売却先で金属は取り外されてリサイクルしたとしても、残りは野焼きされてダイオキシンを発生されたり、不法投棄されるかもしれません。

廃棄物処理法の条文では、
この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)をいう。
と記載されています。しかし、「ごみ」かどうかの判断が人によって違うのですから、この条文は概念としてはともかく、このままでは現場の実務で使うことができません。

1999年には、おからが産廃に該当するかどうか裁判で争った結果、下記の最高裁判所の判例となっています(通称「おから裁判」)。
自ら利用し又は他人に有償で譲渡することができないために事業者にとって不要になった物をいい、これに該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び事業者の意思等を総合的に勘案して決するのが相当である
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=50185
もともと国から類似した内容の通知がでており、それをほぼ踏襲する内容となっていますが、最高裁判所の判例となったことで法的な根拠が確立しました。この中では、既述の「意思」や「取引価値の有無」といった要素以外にも「性状」「排出の状況」「通常の取扱い形態」もあげられています。
判決では「本件 おからは産廃」という結論ですが、全てのおからが産廃だということではありません。温度管理、衛生管理されたものですぐに卯の花として加工されて販売するのであれば廃棄物ではありませんが、処理料金を払って焼却などされている場合は廃棄物に該当するという判断です。
結果的には当然至極な判決でしかないのですが、判断基準として整理すると仰々しく「総合判断説」となり、判断に迷うことがどうしても出てきてしまいます。

EUでは、廃棄物に該当する品目をかなり詳細にリストアップしていたのですが、最近、リストは参考として、総合判断説のような抽象的な基準で運用しているようです(詳細は国によって異なる)。そのため「売れるかどうか」という基準に過度に依存せずに判断しており、売れるものでも有害なものなどは廃棄物となっています。日本の廃棄物処理法より対象範囲が広いことになりますが、規制の手続きが厳しくないようです。日本のような自治体ごとの収集運搬・処分業の許可制度がなく、契約書の締結やマニフェストのような管理も必要ないそうです。もちろん、不法投棄には罰則があります。
EUを例に出しましたが、実は廃棄物該当性を「売れるかどうか」だけで判断している国はほとんどなく、貿易や条約締結手続きで日本の異質さが浮かび上がっています。環境省、経済産業省も他国の制度をベンチマークしており、今後は廃棄物処理法の規制範囲が広がる可能性があります。一方でリサイクル可能品をリストアップし、認定業者が扱う場合は規制緩和するというメリハリの利いた制度改革が進むのではないでしょうか。

(2018年1月)

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